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1: 海江田三郎 ★ 2015/08/30(日) 10:22:35.61 ID:???.net
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11307.html

本連載では、企業が「顧客が買う理由」を考え抜いて「顧客で検証する」ことを提唱している。そのためにはまず、(1)自社の強みを考え抜き、(2)その強みを必要とする顧客が誰かを考え、(3)その顧客はどのような課題を抱えているかを考え、(4)どのようにすればその顧客が自社を選ぶかを考えることが必要だ。

しかし一方で筆者は、数多くの企業経営者やマネジメント、あるいは現場の第一線で活躍するビジネスパーソンと話していて、気がついたことがある。「まず自社の強みを考えましょう」と提唱すると、自社の強みとして「製品」を挙げるケースが少なくないのだ。 製品は企業の強みではない。製品とは、自社の強みを活かしてターゲット顧客の課題を解決するために生み出された「解決策」、言い換えれば「結果」であり、強みではないのである。

富士フイルムとコダックの差 

自社の強みを考えるために、ある企業の例を紹介したい。富士フイルムだ。 

デジタルカメラ登場前、カメラでは写真フィルムが使われていた。この写真フィルム業界で長年、世界で圧倒的な巨人として君臨していたのが米国コダックだ。富士フイルムはコダックに挑戦し続け、2000年頃、ついに写真フィルム市場で世界の頂点に立った。

しかし皮肉なことにこのタイミングで、急速に普及し始めたデジタル写真により、この写真フィルム市場の9割以上が消滅することがわかったのだ。 当時の富士フイルムは、写真フィルムで売り上げのなんと6割、利益の3分の2を稼いでいた。 会社の屋台骨であるこの市場が、わずか数年のうちに音を立てて崩れ始めたのだ。

もしあなたが当時の富士フイルムのトップだったら、「富士フイルムの強みを生かして、新事業を立ち上げよう」と考えるのではないだろうか。 
しかし、富士フイルムの強みはなんだろう。 ここでもし「富士フイルムの強みは、写真フィルム技術だ」と考えていたら、富士フイルムの未来はなかった。 事実、巨人コダックは、「コダックの強みは、写真フィルム」という考えから抜け出すことができず、12年に倒産した。

実は1970年頃、写真フィルムは白黒からカラーへと世代交代をしている。白黒写真フィルムの時代は、 写真フィルムメーカーは世界中に何百社とあった。しかしカラー写真フィルムに世代交代すると、それらの会社の多くは淘汰された。そして残った主なカラー写真フィルムメーカーは、米国コダック、独アグファ、コニカ、そして富士フイルムの4社だけだった。その理由は、白黒フィルムの製造技術の延長ではカラー写真フィルムを製造できなかったからだ。 三原色の微妙なバランスにより天然色を再現するカラー写真フィルムを製造するには、極めて高度な基盤技術が必要とされたのである。

ここで改めて考えてみると、一見「コア技術」(=強み)と思われがちな写真フィルム技術は、実は「コア技術」ではなく「製品技術」であることがわかる。カラー写真フィルムを製造していたメーカーは、実は高度な基盤技術の集合体である写真フィルム技術を生み出すために、自分たち自身も十分に意識していなかった技術上の強みを持っていたのである。

米国コダックが倒産したのは、その強みを生かして新規事業を立ち上げることができなかったからだ。 

当時、富士フイルムのトップだった古森重隆社長は、技術開発部門のトップに対して、富士フイルムが持つ技術の棚卸しを命じた。1年半ほどして十数件の基盤技術が整理された。 そして富士フイルムがどのような技術を持ち、市場ニーズに対してどのような可能性を秘めているのかを評価していったのだ。 その上で、新たに挑戦する新規事業として6つの事業分野が選ばれ、それらの事業が急速に衰退していく写真フィルム事業を代替していったのだ。

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